トップメッセージ Top Message

リアル店舗の強みと
グループの総合力を活かし、
お客様の期待を超える

株式会社ビックカメラ
代表取締役社長

秋保 徹

“お客様喜ばせ業”の
企業理念を全員で体現する

私たちビックカメラは、業界でも稀有なビジネスモデルを展開しています。大都市圏のターミナル駅前に店舗を構え、祖業であるカメラをはじめ、家電製品を中核にお酒、おもちゃ、布団、日用品・薬など多様な非家電商品も扱っている企業は世の中にほとんど存在しないのではないでしょうか。この特徴あるビジネスモデルを研ぎ澄ますことで、極めて強力な市場優位性を維持・発展できると考えています。ただし、そのためのプロセスを着実かつスピード感を持って実行しなければ時代の激しい変化の波に飲み込まれてしまう可能性があり、今後の数年が極めて大切な時期だと認識しています。

私が社長に就任してからの2年間は、全ての経営陣と従業員が「お客様に喜んでいただくことが、商売の原理原則である」ことを正しく理解し、認識を一致することを最優先課題に据えてきました。

近江商人の経営哲学に「商売は世の為、人の為の奉仕にして、利益はその当然の報酬なり」という言葉があります。企業の利益を優先するのではなく、お客様ニーズに応えて満足していただくことが商売の本質という考え方です。多くの企業が「お客様第一主義」を掲げていますが、実際に徹底して実践するのは容易ではありません。当社も事業規模が大きくなるにつれ、その難しさを感じる場面が増えてきていました。「お客様第一主義」を実現するためには、お客様の立場を起点に物事を考えて行動することが重要です。ただし、あくまで慈善事業ではなく企業活動として、お客様の豊かな生活に繋がる商品を提供し、その対価として適切な利益をいただくという考え方を、全従業員に徹底させたいと考えています。

パーパスの再構築に
込めた想い

この度、私たちがパーパスの中心に据えたのは、創業時から受け継がれてきた“お客様喜ばせ業”という言葉です。その言葉に込められた想いを受け継ぎ、繋げていくことで、「期待を超える」ことこそが、私たちが大切にすべきものだと考えました。特に当社は人通りの多いターミナル駅前という好立地を活かし、目的買いのお客様だけでなく、ふらりと立ち寄ったお客様にも期待以上の驚きと喜びを提供することで、多くの方に何度も足を運んでいただける存在でありたいと考えています。

また、同時に策定した「私たちの使命」には、創業時から受け継がれてきた「一人ひとりのお客様を大切に、最高の満足と喜びを感じていただけるよう、笑顔と真心を込めて接します」という言葉を掲げました。これは単なる接客の心得ではなく、お客様が嬉しいと感じていただけるようなサービスをはじめ、思いもよらない商品との出会いなど、買い物をしなくても店舗で楽しさや“ワクワク感”を体験していただきたいという想いが込められています。

丁寧な商品説明はもちろん、ウインドーショッピングだけでも楽しめる売場づくりや、ちょっとした挨拶など、あらゆる場面でお客様に満足と喜びを提供することを大切にしています。そして、より豊かな生活を提案しながら、常に進化し続ける“こだわり”の専門店の集合体を目指します。

さらに「私たちの価値観」では、「個と主体性の尊重」を重視し、従業員一人ひとりが主体的に考えて行動することを求めました。当社は、2000年代以降の店舗数の増加に伴い、本部機能が強化される一方で、絶えず変化し多様化するお客様のニーズを十分に捉えきれなくなる場面が増えていました。そこで、原点に立ち返り、従業員個人の感性やスキルを尊重し、主体的な行動を促す風土づくりが必要だと考えました。

加えて、「正しいことを言う人が一番正しい」という価値観も定めました。これは、単に上司の意見に従うのではなく、お客様を起点に何が最善かを考え、発言し、行動できる職場環境を目指し、上司もまた、部下の考えを謙虚に受け止めることが大切であるという考え方です。

新たに定義した企業理念を浸透させていくことで、従業員全員がお客様起点に業務を行い、“お客様喜ばせ業”を体現していくことで、さらに多くの方に選ばれる店舗・企業になっていくことを目指します。

中期経営計画のコンセプトに基づいた
個社の強みを活かしたグループ経営を推進

「中期経営計画~Vision2029~」では、「個社の特長・強みを伸ばすグループ経営の実現」をコンセプトに掲げました。各事業会社の独自の成長戦略を推進しながら、グループ全体の総合力とシナジーの最大化を目指しています。

特に、グループ経営の核として重視しているのが、ソフマップとコジマの強みを活かした戦略です。ソフマップのリユース事業は、デジタル家電の買取から改修・整備、リユース販売までを内製化できる強みを持っています。これまで事業投資は各社単位で行ってきましたが、今後はグループ全体の視点から総合的に投資を行い、その機能やサービス、ノウハウをグループ全体で活用していく方針です。また、同社のリユース事業は、家電市場が抱える課題の解決策としても重要な役割を担っています。家電製品の品質向上により製品寿命が長期化し、耐久消費財や高額なデジタル商品の買い替えを控えるお客様が増える中、下取りによって実質負担を軽減し、新製品購入の意思決定を促します。

一方、コジマについては、ビックカメラの店舗をハブとしたドミナント戦略を展開します。従来はコジマ単体で出店戦略を立てていましたが、駅前立地のビックカメラと郊外型のコジマを相互に活用することで、出店可能地域の拡大を図り、グループ全体の市場規模拡大に繋げていきます。実際にコロナ禍では、繁華街への外出控えにより郊外型のコジマ店舗の売上が好調でした。ビックカメラのポイントを持つお客様が、自宅近くのコジマ店舗を利用するケースが増えたためです。

このように、グループ各社の役割分担を明確にし、事業のすみ分けや連携を深めることが、今回の中期経営計画の重要なポイントとなっています。各社の強みを最大限に活かし、グループ全体の総合力を高めていく方針です。

お客様のライフスタイルやニーズの変化に迅速に対応し、
グループ全体の企業価値向上を目指す

中期経営計画の成長シナリオにおいて、当社グループが2029年8月期に「目指す姿」として掲げているのは、お客様の生活や消費行動の変化に対応し、進化し続ける「生活適合業態」です。この目標を達成するために重要なのは、常にお客様志向・お客様起点で考える組織を構築し、仕組みやバリューチェーンを改革していくことです。

現在の家電市場は約7兆円規模で、横ばいからやや縮小傾向にあります。今後は人口減少や少子高齢化の進行により、さらなる市場縮小が予想されます。また、ネット通販をはじめとする新規参入プレーヤーの増加により、市場競争は一層激化しています。さらに、かつては最新機器だったスマートフォンを含め、家電製品のコモディティ化も進んでいます。

このような環境の中、当社はカメラから家電、さらに非家電分野へと進化してきたように、今後も事業領域を拡大し続ける必要があります。

その一環として、まずはペット関連商品や既に導入しているゴルフ・自転車以外のスポーツ用品など、新たな商品分野への展開を検討しています。これは単なる品揃えの拡充ではなく、少子高齢化やお客様のライフスタイルの変化に対応した戦略です。一人暮らし世帯の増加に伴うペット需要や、健康志向の高まりによるスポーツ関連用品の需要増加に応えることを目的としています。

一方、既存の家電領域においても、新たな需要を創出する力をさらに高めていきます。私は、「商売に好況も不況もない」と考えており、実際に不況下でも好調な業績を上げている企業は、常に需要を生み出し、成長を続けています。どのような事業環境においても「需要を創出する力」を育成し、持続的な成長を目指します。

お客様起点の経営を実現するため、現場主導への転換も進めます。担当者が自身の判断で主体的に売場づくりを行い、現場の判断で迅速にお客様に対応できる仕組みを整備すると共に、その結果に対する適切な評価制度も構築していく方針です。

また、サステナビリティ経営にも注力しており、多様な働き方の実現をはじめとする社会課題への対応や、物流の最適化、省エネ家電の提案強化などを通じた環境問題への取り組みを推進しています。特に、女性活躍や障がい者雇用については、単に雇用数を増やすだけでなく、例えば、時短勤務をしている従業員が、フルタイム勤務者と同様の充実感を得られる職場づくりなど、実質的に活躍できる環境の整備を進めています。環境問題への取り組みとしては、EC事業における配送の最適化を進めており、環境負荷や人手不足といった課題に対応するため、IT技術を活用した効率化を推進しています。さらに、省エネ家電の提案・販売を強化することで、環境負荷の低減にも貢献していきます。

また、物価高への対応として従業員に対しては積極的な賃上げを行うと共に、お客様に対しては「より良いものをより安く」提供することを通し生活を支援することを重要な使命と考えています。単に価格が安いことが価値ではなく、高額な商品であっても、お客様がそれ以上の価値を感じれば、相対的に「安い」と思っていただけることが重要なポイントです。そのため、低価格競争に陥るのではなく、お客様の立場になり、より良い商品を適正な価格で提供することで、社会課題の解決に貢献していきます。これこそが当社の使命であり、今後もそのスタンスを変えることなく貫いていく方針です。

このように、常に原理原則を見失うことなく、新たなジャンルを開拓しながら、グループ全体の企業価値を総合的に高めていくことが、当社の目指す方向性です。

当社は小売業としてEC事業も手掛けていますが、あくまでリアル店舗を中核とし続けたいと考えています。時代がどのように変化しても、リアル店舗の存在意義が失われることは決してありません。この価値をさらに磨き上げることが、当社の成長戦略における最重要課題です。

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