人的資本経営 Human capital managemente
人的資本経営
従業員一人ひとりの能力を最大限に発揮させることこそが当社グループの人的資本経営であり、そのための人財育成の基本として、内発的動機付け、すなわち「ハートに火をつける活動」にあると考えます。企業理念である“お客様喜ばせ業”としての使命感や志から湧き上がる熱意こそが、主体性を生み出し、提供価値の向上につながります。この理念を基盤に、当社は企業理念を体現する人財の育成を目的とし、「人財基本方針」及び「社内環境整備方針」に基づき各種施策を推進しています。
人財基本方針
当社は従業員を大切な宝であるという考えと、自らその価値を磨く内発的動機付けに重点を置くため、人材育成方針ではなく人財基本方針として掲げていきます。
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1.企業理念に共感し体現する人財を育てる
従業員の主体的活動は、企業理念を前提としたものとし、全ての判断基準は企業理念によるものとする。
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2.個の提供価値に着目した能力開発を行う
従業員の多様な能力に着目し、⼀人ひとりの専門性や強み、人間力の最大化を図る。
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3.OJT教育をベースとして、各現場において成長の機会提供を行う
教育研修ではなく日々の実体験によって学ぶ事に主眼を置き、現場でのPDCAにて能力開発を促す。
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4.上司が従業員の主体性を尊び、「対話」をしながら伴走する
従業員自ら考え行動する事を目的とし、上司は指示をするのではなく見守り支援する。
社内環境整備方針
従業員のハートに火をつけ、求める人財を育成するためには、以下の3つの要素に基づいた社内環境の整備が不可欠です。
これら3要素を全て満たすことが、従業員が持続的に熱意を持ち続けられる環境を形成すると考えています。
各要素に対して具体的な指標及び目標を設定し、社内環境の整備をこの指標及び目標の達成に向けた施策と位置づけ、実行しています。
| 3要素 | 内容 | 方針 |
| (1) 従業員が仕事に誇りと情熱を持つ | ハートに火がつく前提となる要素。『お客様喜ばせ業』として相手の幸せが自分の喜びとして捉え、自己の存在意義実感へ繋げる | 方針1: 企業理念への共感 |
| (2) 従業員が働きがいを感じる | 従業員自ら考え行動した事がどう貢献できたかの実感や、その多様な能力に着目した能力開発を行う事で得られる成長実感によってハートに火がつくものと考える |
方針2: 個人への権限委譲 方針3: マネジメントスタイルの変更 方針4: 多様な能力に着目した制度設計 |
| (3) 従業員が働きやすい環境である事を実感できる | ハートに火がついた状態が一過性でなく継続する為の基盤を整えるもの 主に心身の充実や柔軟な働き方を可能にする為の制度設計や風土づくりを行う |
方針5: お客様にとことん向き合う為の基盤づくり |
指標及び目標
当社は、「お客様喜ばせ業をつなぎ、期待を超える」というパーパスのもと、従業員一人ひとりが最大限の能力を発揮し、成長を実感できる環境づくりを目指しています。
この理念を実現するため、人的資本経営の主要指標として「eNPS(ビックカメラ推奨度)」をKGIに設定し、それにつながる全体指標として「ワークエンゲージメント」を設定しています。
また、エンゲージメント向上を支える3つの要素として、「仕事適応感」「能力発揮度」「職場適応感」をKPIに掲げ、従業員が誇りと情熱を持って働ける組織づくりを推進しています。
これらの要素に基づくエンゲージメントのスコアをもとに、当社では従業員の「ハートに火がついた状態」を定義しています。
測定には、グループ全体で実施する従業員満足度調査(自己申告アンケート)やウェルネスサーベイを活用し、エンゲージメントを定期的に把握。
それらの結果をグループ内で共有し、課題に応じたアクションを継続しています。
このサイクルを通じて、従業員のモチベーションを高めるとともに、「ハートに火がついた状態」を持続させることを目指します。
そして最終的には、eNPS(ビックカメラ推奨度)の向上を指標として、人と組織が共に成長する企業を実現してまいります。
【2030年に向けた全体指標】
| テーマ | テーマ別指標 | 全体指標 | 目標 | |||
| 測定手段 | 目標数値 | 測定手段 | 目標数値 | 測定手段 | 目標数値 | |
| 従業員満足度調査 ※1 | ウェルネスサーベイ | ウェルネスサーベイ | ||||
| 仕事への誇り・情熱を持つ | 仕事適応感 | 80% | ワークエンゲージメント※2 | 55%以上 | 推奨度eNPS※3 | 70%以上 |
| 仕事が好きか・向いていると思うか・存在意義を実感出来るか | ||||||
| 働きがいを感じる | 能力発揮度 | 73% | ||||
| 強みを生かしているか・成長実感があるか・公正な評価を受けているか | ||||||
| 働きやすい環境であることを実感できる | 職場適応感 | 82% | ||||
| 人間関係は良好か・制度や設備に満足しているか | ||||||
【指標の推移】
| 指標 | 2023 | 2024 | 2025 | ギャップ | 2030目標 | |
| 従業員満足度調査※1 | 仕事適応感 | 75.9% | 77.7% | 77.7% | -2.3% | 80.0% |
| 能力発揮度 | 66.7% | 70.8% | 70.0% | -3.0% | 73.0% | |
| 職場適応感 | 77.0% | 78.9% | 80.3% | -1.7% | 82.0% | |
| ウェルネスサーベイ | ワークエンゲージメント※2 | 44% | 43% | 45% | -10% | 55%以上 |
| eNPS※3 | 56% | 57% | 60% | -10% | 70%以上 |
※1 従業員満足度調査:上記3つの設問に対して「適している・どちらかといえば適している・どちらかといえば適していない・適していない」の4段階で回答。DI値は「適している・どちらかといえば適している」のポジティブ回答率(%)-「適していない・どちらかといえば適していない」のネガティブ回答率(%)を算出したもの。数値が高い方が満足度が高い事になる。
※2 ワークエンゲージメント:測定尺度は、新職業性ストレス簡易調査票ワークエンゲージメント関連2問に独自質問3問を追加した5問で構成し質問肢により調査。回答結果をスコア化し、FiNCウェルネスサーベイ導入企業全回答者を母集団とする偏差値と、その全回答者平均を算出し、自社従業員結果においての偏差値50以上の従業員割合を指標としている。
5問の構成は以下である。
・仕事をしているとき、活力が湧いてくると感じることがある → Yes・No
・仕事に熱意を持って取り組んでいる → Yes・No
・仕事に没頭しているとき、幸せや喜びを感じることがある → Yes・No
・仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる → そうだ・まあそうだ・ややちがう・ちがう
・自分の仕事に誇りを感じる → そうだ・まあそうだ・ややちがう・ちがう
※3 eNPS:従業員の満足度指標となる質問をもとに回答結果をスコア化し、FiNCウェルネスサーベイ導入企業全回答者を母集団とする偏差値と、その全回答者平均を算出し、自社従業員結果においての偏差値50以上の従業員割合を指標としている。
設問は下記である。
「友人や知人にあなたの会社への入社を薦めたいと思う」→ 非常にそう思う・そう思う・どちらでもない・そう思わない・まったく思わない
価値創造に向けた取組み
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(1)仕事に誇りと情熱を持つ
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方針1:企業理念への共感
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お客様喜ばせ大賞の制定
パーパス「“お客様喜ばせ業”をつなぎ、期待を超える」を体現している従業員を称え、その優れた姿勢やスキルを全社で共有するとともに、周囲の仲間を鼓舞し、さらなる成長の原動力となることを目指して表彰制度を導入しました。
本制度では、お客様からお褒めの言葉をいただいた従業員や、専門性を活かして売場づくりや接客力の向上に貢献した従業員を表彰しています。
また、従業員の自主的な立候補や、店舗店長が審査を担うなど、現場の主体性を重んじる点も特徴です。
この制度の導入により、従業員の意識やスキルの向上に加え、一人ひとりが“お客様喜ばせ業”に誇りと喜びを感じ、モチベーション高く業務に取り組むようになりました。
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お客様喜ばせ大賞の制定
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方針1:企業理念への共感
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(2)働きがいを感じる
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方針2:個人への権限委譲
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「ハンドレッド計画」の推進
当社では、現場の一人ひとりが主体的に考え、行動し、売れる売場を自ら創造していく取り組みを「ハンドレッド計画」と呼び、経営における最重要施策として推進しています。
この計画は、「良い店=売れる店」という発想の転換を軸に、お客様にとって“選びやすく、買いやすく、欲しくなる”売場づくりを進めるものです。商品政策の強化、顕在・潜在ニーズの把握、季節・イベント・トレンドを捉えた売場演出、関連商品の組み合わせによる提案など、現場が主体となり改善と創造を続けることで、お客様満足度と売上の双方を高めることを狙いとしています。
市場環境や消費者行動が大きく変化する中、競合他社との差別化を図るためには、従業員一人ひとりの創造性と主体的な行動が不可欠です。当社は、こうした取り組みを継続的に生み出すため、権限委譲や評価制度の見直し、表彰制度の拡充など、挑戦を後押しする環境整備を進めてまいりました。その一環として、「お客様喜ばせ大賞 ハンドレッド部門」表彰制度を導入し、優れた取り組みを称賛・共有することで、仲間の意欲喚起と組織全体の成長につなげています。
今後も、「地域のお客様にとってNo.1の売場」、そして「オールセルフ化(選びやすい、買いやすい、欲しくなる売場)」の実現を目指し、従業員一人ひとりがハンドレッド計画を体現し続けることで、当社ならではの価値創造に努めてまいります。
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「ハンドレッド計画」の推進
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方針3:マネジメントスタイルの変更
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キャリアデザイン制度
従業員一人ひとりが主体的にキャリアプランを考える「キャリアデザイン制度」は、従業員のパフォーマンスの最大化やモチベーション向上に繋げることを目的としています。
以下3つの目標を上司に申告し、上司が部下の日常の活動を通じて伴走しながら目標達成を支援します。
・ 状態目標(理想とする姿)
・ 結果目標(理想の姿を実現するための具体的かつ明確なゴール)
・ 行動目標(ゴールに向かうための具体的な行動)
この取組により、従業員が自らの成長を意識し、キャリア形成に主体的に取り組む風土を整えていきます。
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キャリアデザイン制度
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方針4:多様な能力に着目した制度設計
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ダイバーシティエクイティ&インクルージョン
当社では、性別、国籍、障がいの有無などに関係なく、一人ひとりが能力を発揮できる環境づくりを通じて、多様な視点を店舗運営や商品提案に活かし、お客様満足度と企業価値の向上を目指しています。
『女性活躍推進』
当社では、性別に関係なく意欲と能力を正当に評価し、店舗運営や組織マネジメントの中心で活躍できる機会を広げています。
特に女性管理職の登用を重点テーマと位置づけ、店長・副店長をはじめ、物流部門、人事、営業企画といった本社部門においても女性リーダーが活躍しています。
お客様視点の発想をマネジメントに生かすことで、より多様な視点から意思決定が行われ、組織の成長やお客様満足度の向上につなげています。また、2025年、厚生労働省「えるぼし(3段階目)」認定を取得し、採用・継続就業・労働時間・管理職比率・多様なキャリアという5つの基準すべてにおいて評価されました。
今後も、女性が継続的にキャリアを築けるよう、育成・登用・働きやすさの一体的な推進を図り、2030年までに女性管理職比率15%以上の達成を目指しています。
『外国籍従業員の活躍』
国内外のお客様にお買い物を楽しんでいただけるよう、外国籍の従業員も活躍しており、多用な視点を活かした売り場作りや接客に貢献しています。
『障がい者雇用従業員の活躍』
当社は、障がいを「個性」と捉え、従業員それぞれの「特性」を活かすことを大切にしています。
障がいのある方が安心して長く働けるよう、支援学校との連携による店舗実習の実施、店舗での受け入れ体制の整備や管理職向けの研修、入社時のサポートなど、定着に向けた環境づくりを進めています。
また、アルバイトから正社員への登用や、現場経験を生かしたキャリアアップの機会を設けることで、障がいの有無にかかわらず一人ひとりが能力を発揮できる職場を目指しています。 -
自ら選べるキャリア
従業員一人ひとりが多様な能力を活かし、主体性を持って活躍してほしいという考えのもと、当社ではキャリアを選択する機会を提供しています。
『ビックカメラマイスター』制度
専門性を磨きお客様に新しい発見による驚きと感動を提供する専門職『ビックカメラマイスター』は、総合・専門14の部門、3つの階層で構成されています。
第1階層はマイスター認定の販売員で構成されており、より専門性の高い第2階層はシニアマイスターと一芸に秀でた専門販売員であるエキスパートマイスター、そして最上位の専門職であるエグゼクティブマイスターは業界屈指のスペシャリストとなる販売員であり、管理職である店長に相当する、全販売員の模範となる存在となります。
2025年11月現在、マイスターは260名、シニアマイスターは42名、エキスパートマイスターは7名となります。
『社員登用』制度
当社では、パート・アルバイト従業員を対象に、意欲と能力に応じて正社員として活躍できる機会を提供しています。
現場で培った専門知識や接客スキルを正当に評価し、長期的なキャリア形成を支援するための制度です。
登用試験は年1回実施しており、筆記試験や面接を通じて、仕事に対する姿勢やお客様志向、チームへの貢献度などを総合的に評価します。
この制度を通じて、現場で力を発揮する多様な人財が着実にキャリアアップを実現し、組織全体の活力と持続的な成長につながっています。『ポストチャレンジ』制度
各職種・職場で専門人財の拡充や従業員の挑戦を促し、主体的に仕事を選択できる制度です。店舗から本部、または新規事業などへの異動を希望し、選考を経て新たなキャリアに踏み出すことが可能です。自ら手を挙げて挑戦することで、従業員の成長意欲を高め、組織全体の活性化と人財の多様な活躍を促進しています。
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公正な評価制度
当社では、従業員一人ひとりが能力を発揮し、公正に評価される仕組みとして、年2回の評価制度を導入しています。
まず従業員自身が自己評価を行ったうえで、上司が評価を実施。その後、双方の評価結果を面談で話し合い、成果や課題を共有します。
面談による直接対話を通じて、従業員は自らの成長課題を明確にし、上司はマネジメントレベルや知識・スキルの向上点を把握することができます。この仕組みにより、評価の透明性と公平性を確保するとともに、キャリアアップにつながる機会を提供しています。
さらに、公正な評価を実現するためには、評価者のスキル向上が欠かせません。
当社では、管理職を対象にした評価者研修や360度サーベイを毎年実施し、評価の精度と面談の質を高めています。
これにより、従業員が納得感を持って成長に向き合える評価制度の運用を目指しています。 -
教育サポート
入社後のキャリア形成を支援するため、様々な研修制度を整えています。
入社1年目の従業員向けに、社会人導入研修やフォローアップ研修を実施するほか、各階層別研修、企業理念研修、スキル向上のための各種研修など、成長の機会を提供しています。
また、自己研鑽を目的とした手挙げ式の研修も充実させています。一例として、外国人のお客様対応のための英会話研修、資産形成を学ぶ研修、各種eラーニングなど、従業員が自らカリキュラムを選択し、成長に繋げられる環境を構築しています。【研修制度の体系図】
理念 接客力・商品力 自己啓発 資格取得 部長クラス 部長 フィロソフィー コンプライアンス・ハラスメント 接客ロープレ ハンドレッド計画 商品勉強会 eラーニング・英会話・
各種コンテンツ家電アドバイザー
(生活家電・AV家電)次長クラス
課長クラス店長 エグゼクティブマイスター 部署長 係長クラス 副店長 シニアマイスター
エキスパートマイスターチーム長 主任クラス 統括 マイスター リーダー 一般 3年目 2年目 フォローアップ 社会人導入
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ダイバーシティエクイティ&インクルージョン
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方針2:個人への権限委譲
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(3)働きやすい環境であることを実感できる
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方針5:お客様にとことん向き合う為の基盤づくり
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両立支援制度
心身ともに充実した生活を送りながら得る様々な経験こそが、お客様のより豊かな生活へのご提案に活かされるものであると考えます。そのためにも、従業員の生活と仕事の両立が可能な環境、制度を整えています。
当社では、出生によるキャリアの男女差を無くすべく、育児休業制度や短時間勤務制度などの両立支援制度を整備し、柔軟な働き方の一環として在宅勤務も活用しています。また、育児中の従業員の管理職登用などを積極的におこない、育児の経験を店舗運営や接客に活かしています。
2018年には厚生労働省「プラチナくるみん」認定を取得し、現在も継続して両立支援の推進に取り組んでいます。会社の制度 育児 介護 休業 育児休業
原則、子が1歳に達する日の前日まで
(最長3歳まで)※法定以上介護休業
最長1年間 ※法定以上短時間勤務 小学校卒業年度末の3月まで
※法定以上介護利用開始の日から
3年の間で2回まで特別休暇 対象家族1人につき年5日(有給) 対象家族1人につき※年5日(有給)
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企業主導型保育園「BicKids」
当社では、出産、子育てなどのライフイベントを迎えても安心して働ける環境づくりを進めています。
その一環として、2017年に開設した企業主導型保育園 「BicKids」を通じて、働くパパ・ママを支え、次世代を育む取り組みを推進しています。
BicKidsは、平日だけでなく土日・祝日も含めて365日、8時から21時まで開園するなど、流通小売業という当社グループの働き方に対応した保育園です。
また、地域の方が利用できる「地域枠」を設け、従業員の育児・就業を支援しながら、地域社会との共生も図っています。
園では「子どもたちの光り輝く個性と無限の可能性を大切に育む」を保育理念に掲げ、安心・安全な環境のもとで、外遊び、食育などを通じて子どもたちの健やかな成長を支えています。
こうした保育支援を通じて、従業員が「子育て」と「働く」を無理なく両立できる環境を実現することで、人財定着の促進、ダイバーシティの推進、そして育児世代を含むすべての従業員が活躍できる職場風土の醸成を図ってまいります。ビックカメラグループの保育園 BicKids(ビックキッズ)
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両立支援制度
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方針5:お客様にとことん向き合う為の基盤づくり